飽食の国、日本。この国では年間621万トンの食糧が廃棄されている。SDGsが喧伝される中で、フードロス問題を解決するための取り組みには、フードバンク・無料スーパーの二種類がある。
フードバンクとは、食品企業の製造過程で発生する、まだ食べられるにも関わらず廃棄されてしまう食品や食材を引き取り、福祉施設などに無料で提供している団体である。食品ロス削減国民運動では、製造・流通・販売によるパイロットプロジェクトとフードバンク活用で、資源を効率活用するフードチェーン造りを進めている。
一方無料スーパーは、賞味期限切れ前にもかかわらず処分されてしまう食品を大手スーパーから譲り受けて無償で提供するプロジェクトである。フードバンクと違い、誰でも食品を受け取ることができ、多くの人がフードロスに関心を持つきっかけになるのが利点だ。
本稿ではフードロスを減らすために、無料スーパーがどのような試みをしているのか説明していく。
無料スーパー今昔
無料スーパー活動がどこで始まったかご存知だろうか? 正解は、広大な農地を持つ食糧大国・オーストラリアだ。
世界初の無料スーパーは、オーストラリアの市民団体・オズハーベストによって開催された。店内の広さは約200平方メートルほど。開店時間は平日の午前10時から午後2時までの1日、4時間営業を行っており、その時間帯オズハーベストマーケットは店内にあるすべての商品を無料で提供している。客は買い物かご1つ分まで商品を手にできるが、代わりに寄付が必要である。毎日150人ほどが来店し2000点の品物の大半がなくなる。
無料スーパーは身近な所にも展開している。今回のコロナウイルスショックではインバウンド観光客激減、緊急事態宣言による飲食・娯楽・観光・学校給食業界停止で大量の余剰食材が発生した。オンラインスーパーロスゼロは、このような食品を買い取り、EC販売している。
出典:ロスゼロ(https://www.losszero.jp/)
フードバンク代表者へのインタビュー(2017)
フードバンクを開設した動機は?
「全ての方にフードバンクという社会資源があるのだということを分かりやすく知ってもらうためです」
どのような人に来てほしいのか?
「生活が苦しい方もそうでない方も、皆さんに来てほしい」
現時点での課題や運営をしていくにあたって難しいことは?
「活動の性質上、収益は見込めない。活動資金はすべて持ち出しから始まり、心ある人の寄付で補われている。人ではボランティア。常に経済的に厳しく、健全でない自覚はある」
無料スーパーを運営していて、社会的意義は感じるか?
「現時点では課題が多く幸せという感覚には遠いが、利用者の笑顔を見ると自然と嬉しくなる。寄付者に『今まで食べ物を捨てていたので心が痛んだけれど、生かせる場所があってよかった』と言われたときも同様である」
まとめ
本研究の間、有志で無料スーパーを開催しようという機運が高まったが、「万が一食品衛生上のトラブルがあった場合、責任の所在が判断できない」という問題で頓挫した。一般人が無料スーパーを開催するためには、農家や小売など信頼出来る物資提供先が不可欠だ。
現状の無料スーパーの運営でも、金銭面や物資面での課題が多い。これを解決するためには、活動資金を生む事業を成立させる、フードロスの現状を多くの人に知ってもらい関心を高めるといった活動で、来店者・寄付金の増加をねらうことが必要だろう。
参考文献
オズハーベスト公式サイトhttps://www.ozharvest.org/news-and-media/