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ユニクロの逆襲、現代日本企業のグローバリゼーション

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なぜ商業は必要なのか?

 そもそも商業とは、有形財が商業者によって取引される行為をいう。卸売・小売業者はそれぞれ、仕入れ行為では「買い手」、販売行為では「売り手」となり、仕入れと販売2つの機能を遂行する立場の人が商業者(商人)とされる。広義には、これら狭義の商業(卸売業・小売業)に補完的要素(倉庫・運輸・保険・金融・情報処理産業、賃貸業・印刷業など)を加えたものをいう。つまり商業とは、生産と消費の所有的・場所的・時間的・量的ギャップなど、全ての経済的間隔を埋める働きといえる。

 商業の起源は紀元前3000〜2000年前のエジプトに遡る*1古代エジプトでは、交換商業が行われていたという。最初期の商業では、原始共同体による自給自足生活から規模が大きくなるにつれ発生した余剰生産物を、物々交換していた。次に貨幣を使って媒介物介在の交換として行われるようになる。次に、鋳造貨幣や銀行券という貨幣が生まれ、現在ではクレジットカードや仮想通貨のような新しい形の信用経済や電子デバイス活用が進んでいる。

 では、そうして生まれた商業はどのように社会に必要とされ、なぜ現在まで続いているのだろうか。

 

 現代の商業活動の構造は、商的流通活動、物的流通活動、情報流通活動、資金流通活動の四つの体系から成り立っている。

 流通は、直接流通と間接流通に分けられる。直接流通では、生産者と消費者が直接向き合って取引するもので、現代では訪問販売・通信販売・消費生活協同組合(生協)がこれに含まれる。間接流通では、消費者と生産者の間のモノ・カネのやり取りに商業者が介入し、流通の活動や機能を専門的業務として遂行する。商業者の形成する社会的品揃え物は、生産者の販売・消費者の購買が商業者のもとに社会的に集中した結果である。これを売買集中の原理といい、商業者数×(生産者数+消費者数)の式で表される。売買集中の原理によって、生産者にとっては取引費用・時間が節減され、消費者にとっては、商業者の元に集められた多様な商品を選択出来、生産者から直接購入するより魅力的といえる。ただし、商業者数が増加しすぎると、取引数の上昇に伴って取引費用が増大し、かえって取引コストがかさんでしまう。

 以上をまとめると、一般的には商業者の存在によって、生産者と消費者の取引総数が節約され、取引コスト・探索コスト・物流コストなどの流通コストが削減される。

 つまり、商業者の存在のおかげで、生産者も消費者もより効率的な取引ができるようになるのだ。これが商業が現在まで続いてきた意義といえる。

 

現代日本企業の貿易の動向

 次に、現代日本企業は貿易を通じてどのような商行為を行っているのか考えてみる。

 通商白書をみてみよう。2019年の日本の貿易は、輸入の伸びが輸出の伸びを上回り、貿易赤字となった。貿易収支黒字は2016年と比べて大幅に減少している。
 まずは日本の産業構造をおおまかにみてみる。「ものづくりの国」と1990年代からPRされているように、日本の主要輸出品目は機械製品であることがわかる。だが、年度後半から韓国・台湾をはじめとした東アジア圏での半導体需要が減少したことで市場が縮小し、輸出額が減少したことにある。一方、日本が輸入した製品の品目自体は増えていないが、中東との貿易額のうち95%を占める鉱物性燃料の価格が世界的に上昇したことで、輸入総額が増加した。また、特許など知財関係の収入は上がっているが、音楽・ソフトなどの利用料である著作権料の収入は減少している。


 2019年の日本の貿易動向を読み解くカギは、「対中貿易」「対米貿易」である。
 一つ目の対中貿易は垂直分業構造をもっている。中国は日本の輸入総額の23.2%を占める。日本から中間財を輸出し、中国で加工、完成した製品を欧米に輸出するという構造である。中国では現在ハイテク産業が発達しており、安価でテック製品を生産できるようになった。それに関連して、PC関連製品の輸入が伸びている。
 二つ目の対米貿易は水平分業構造をもっており、最終財貿易となっているのが特徴である。米国からは鉱物資源、医薬品、航空機などを輸出しており、日本からは完成車などを輸出している。米国との輸出推移は横ばいとなっている。近年では、映像機器・PCの輸出数量が減少している。
 一方、対外投資は7年連続で増加している。世界全体の対外直接投資残高の4.9%を占めており、EUや米国に次ぐ直接投資大国ということがわかる。こちらでも、米国に対する投資残高が最も多く、続いて英国への残高が並ぶ。日本は米国にとって2番目の対内直接投資実施国である。
 日本の貿易はアメリカ・中国との関係が深いこと。主力の機械製品の不調・鉱物性燃料の価格で貿易赤字を出してはいるが、対外投資が活発に行われていることから経済は疲弊しきってはいないことがわかるだろう。

 

ファーストリテイリングを例にした製造業の海外展開

 最後に、製造業における日本企業の海外進出について触れてみよう。

 第二次世界大戦で壊滅状態だった日本は、1945年の終戦から40年ほどで、世界市場のトップに躍り出た。高度経済成長期、トヨタやホンダ、ソニーをはじめとする日本企業は世界市場を席巻し、その圧倒的なシェアにジャパン・バッシングという社会現象すら起きた。しかし現在、日本経済は当時の勢いを完全に失っている。日本はバッシング対象ではなくなり、パッシング(passing,スルー)になり、現在は「ジャパン・ナッシング(Nothing,ないのと同じ)」という言葉すら生まれた。
 この構造が生まれた理由は、高度経済成長期は「製造業」が経済の花形であったからだと思う。終戦を迎え、人口増加にともなってインフラを整える必要があったこと、当時は第二次世界大戦時代の軍需工場設備が余っていたこと、アメリカの傘下に入り軍需費を気にする必要がなくなったことが、製造業に注力するきっかけになった。しかし現在、産業構造は完全に変化している。現在、世界時価総額の上位を占める企業はGAFAのようなプラットフォームビジネスである。日本企業は保守的な体質・言語の壁もあって、その波に乗り遅れてしまったのだ。諸外国の製品レベルも向上し、優れた製品を作っても外国にまねされてしまう。
 しかし、製造業の強みは、海外展開において文化・慣習に合わせた現地化がサービス業に比べ必要ないことだ。いわゆるメーカーはどのように海外展開を行っているのだろうか。ユニクロファーストリテイリング)を例にみてみよう。


 「GU」「ユニクロ」を運営するファーストリテイリングは海外での収益を拡大させている。2001年に海外一号店をロンドンにオープンさせ、2002年には中国に初めて出店。そして2019年8月期の決算では、海外営業利益が国内部門を上回った。主力事業の海外利益が国内を上回るのは主要小売企業初だという。
 この成長のけん引役は、中国本土・香港。台湾からなるアジア圏だ。SNSを利用したデジタルマーケティング、日本の人気キャラクターとのタイアップで若者の支持を得た。同時期に韓国で不買運動が行われていたものの、その影響を跳ね返した。今後、インドや東南アジア市場も強化していく予定だという。
 こういった好調な海外展開の背景には、ブランドビルディング・デジタルマーケティング・出店戦略が成功があるだろう。プラットフォーム戦略を取り入れることで、製造業の海外展開への可能性が開けていくと考える。

 

参考文献

「通商白書」2019年版
ユニクロ、海外で稼ぐ 営業利益国内を逆転/日本経済新聞」2019年10月10日付https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50850810Q9A011C1EA2000/

*1:古代地中海商業が起源という説もある。