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周波数を合わせて

24時間働けますか?

このエントリーは、近年の労働問題・成果主義賃金をマルクス経済学の視点から分析したものです('ω') なお、筆者の考え≠記事内容の全容です。

長時間過密労働

 日本は世界的にも長時間労働の国だが、長時間労働に関する国際情勢は変化している。近年日本は、リーマンショック、世界的金融危機を機に輸出の落ち込みに合わせて労働時間が若干減少している。一方、米はサブプライム住宅ローン等家計債務の負担から雇用者労働時間が先進国一になった。これは、社会保障の支えがないまま貧困・過剰債務化すると悲惨な労働条件がまかりとおる例だ。

日本的雇用の問題点

 従来では、長期(終身)雇用・年功序列制、新規学卒者一括採用という「日本型雇用」が長時間過密労働の原因だと考えられていた。

  • 男性正規雇用者:長期雇用と引き換えに長時間過密労働。会社中心的態度で同僚と競い、地位・責任・所得を高める。技能職務を重視した専門職採用ではなく、新規学卒者を一括採用して企業独特の知識技術を学習させることで企業に依存させる。
  • 女性:子育てや家庭責任を一人で背負うために退社してしまうことを理由に、在職中も昇給・昇格させてもらえない。子育て後もパート・非正規労働に固定される差別構造。

 このような「日本型雇用」慣行が社会全体を大企業中心・優先社会にして、長時間過密労働を受け入れさせてきた。しかし日本企業も円高によりグローバル化多国籍企業化し、コスト削減のためにリストラを行うように。そこでは、長期安定雇用と引き換えの過密労働から、成果主義やリストラの脅威に強いられた長時間過密労働への変化に動機の変化がある?

近年の雇用情勢

 厚生労働省が示す過労死ラインは週60時間労働(週20時間、月80時間残業)。しかし近年、すべての所得階層において「週60時間以上働く労働者数」「週60時間以上働く労働者比率」が増大。→ 労働「構造改革」下の日本の労働者が、「高い賃金と引き換えに長時間労働」に就いているのではなく、「低賃金と長時間労働との悪循環」に陥っていることを示している。

 20~29歳の若年層における過労死ライン労働者は増加。大学卒業後1~3年の間に30~36%の若者が離職。

 また裁量労働制による過労死・自殺も問題だ。これは労働時間と成果・業績が必ずしも連動しない職種において適用され、あらかじめ労使間で定めた時間分を労働時間とみなして賃金を払う形態だ。日本の裁量労働制は実施する場合には労使協定を締結する必要があり、労働時間規制の適用も排除されない。また、一定の年収要件を満たし、職務の範囲が明確で高度な職業能力を有する労働者(年収1000万円以上のコンサルタントや研究者など)には高度プロフェッショナル制度が適用でき、時間外労働や深夜割増賃金撤廃が可能。一方経団連は、頭脳労働者に対する労働時間規制緩和ホワイトカラーエグゼンプション)を望んでいる

 一方で週休三日制の導入という声も聞く。主に西欧諸国で検討され、日本ではパナソニックホールディングス、リクルートなどが試験的に導入している。しかし、西欧のそれと日本のそれは大きく異なる。

成果主義賃金の落とし穴

 マルクスの時間賃金論では、「低い労働の価格(賃金)」が、「みじめな平均賃金だけでも確保するために」「労働時間延長の誘因」となる。

「まず、労働の価格が与えられている場合には、日賃金または週賃金は、提供される労働の長によって決まるという法則……からは、労働の価格が低ければ低いほど、労働者がみじめな平均賃金だけでも確保するためには、労働分量はそれほど大きくなければならない。または、労働日はそれほど大きくなければならない、という結論が出てくる。この場合には、労働の価格が低いことが、労働時間の延長として作用する。」

 またマルクス資本論」では、成果主義賃金に対してこう述べる。

  • 時間でなく成果に対して賃金を支払う制度が、賃金切り下げ・長時間労働を促進する。
  • 出来高賃金は頑張れば頑張るほど「生産者の作業能力」に合わせて支払われるような外観をもつ。しかし、これは労働の本質を変えるものではない。
  • 「労賃の本質」=「労働力の価値」=「(一日の)労働力の再生産をするのに必要な諸商品の価値」
  • 一時的に出来高賃金が「生産者の作業能力」にあわせて支払われるかのように見えても、それは「労賃の本質」水準=労働力を再生産するのに必要な食べていけるだけの水準に引き戻される

どういうメカニズムなのか?

  1. 出来高賃金支払いにおける最初の段階

1日の労働時間は8時間。1日8時間で受け取る商品の価値は12000円。「平均程度の強度と熟練で労働する1労働者」は24個作る。よって1個あたりの価値は500円。

労働者は1個あたり250円、1日8時間・24個では6000円を受け取る。

資本家の儲け・剰余価値は6000円となる。このとき剰余価値[1]は100%。

  1. 過渡的に一部の労働者のみ出来高に合わせた高賃金が支払われる段階

1時間で3個作ることが平均。1時間で5個作る労働者が生まれてくると、

(40個)×(1個当たり出来高250円)=日賃銀10000円

この労働者は40個・20000円を生産し、そのうち1万円を受け取る。

資本家の剰余価値は1万円。剰余価値率は100%。

  1. 一部の労働者の優れた出来高基準が新しい標準にされる段階

 労働者同士の競争を通じ、1日8時間で40個作ることが新たな標準とされる

 1個あたりの出来高賃金は250円→150に

 20分で1個→12分で1個作ることが平均

(40個)×(1個あたり出来高150円)=日賃銀6000円

資本家の剰余価値は14000円。剰余価値率は233%

 

「頑張れば頑張るほど報われる」という成果に対する支払いは過渡的なものだ。結果的により過酷な労働強度を新しい標準として賃金単価を引き下げ、搾取を進めるのだ。

現代日本裁量労働制は労働者に報いるものではない。過酷なノルマを果たすために長時間過密労働を蔓延させる。

成果主義賃金制度下での長時間低労働の原因は、「成果に支払う」という制度的本質そのものにあり、偶然の制度設計の失敗や労働者の自己責任ではない。

成果主義の本質とは

 成果主義は「頑張れば頑張るほど報われる」仕組みではない。賃下げと長時間労働に労働者を引き込むことが本質。

 非正規労働者の増大や「派遣切り」と同様に、正規労働者の間での「成果主義的ただ働き」という貧困の増大は、企業にとってのいっそうの利潤追求に不可欠だ。

 「頑張れば頑張るほど報われる」「賃金や働き方など労働者の処遇は、労働組合による集団交渉で獲得すべきものではない。個人単位の成果・評価で決定すべき」これら大企業の主張は、労働者に貧困の責任をなすりつける「自己責任論」のまやかしである。

 労働者が人間らしい労働・生活をするためには絶対に休息が必要なのだ。だからこそすべての労働者が1日8時間労働で賃金を得られるよう「労働組合による集団的な交渉で一律に」要求、獲得しなければならない。

 

[1] 剰余価値率とはマルクス経済学において可変資本に対する剰余価値の割合を示す。搾取率とも言う。