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眠れない夜は眠らない僕と

【感想】ディストピアとしてのエリオスR

 『エリオスライジングヒーローズ』が好きだ。女性向けソシャゲには珍しい、アメリカン・SFな世界観が好きだ。ポップなイベントコンセプトが好きだ。フレッシュなキャラデザと必殺技アニメーションの熱い演出が好きだ。

 今回は1周年を迎えたエリオスRへの愛を叫びながらダイマしていく。運営は『あんさんぶるスターズ!』でおなじみのハッピーエレメンツ。UIが綺麗でシステム周りの改善も比較的早い。ゲーム自体も、デイリーミッションがとても緩い・イベント期間が長め・オートバトル搭載など、仕事に追われる社会人やメインゲームに追われる多忙オタクでも小手先で楽しめるライト設計だ。プレイアブルキャラは人気声優ぞろいのイケメン16人を取り揃えており、主人公(≒司令)はセリフひとつもないため、夢女子でも腐女子でも(もちろん男性でも)同様に楽しめる設計となっている。

 注目すべきはメインシナリオ。なんと、こんな明るいビジュアルに反してディストピア要素が強い。MCUやヒロアカのような王道ヒーロー物を期待して始めたユーザーは、読み進めるたびに度肝を抜かれること間違いなしである。
 キャラ達が属する『エリオスタワー』は、人間に『サブスタンス』という物質を投与して後天的に超能力を与える≒人体実験を行っている組織。ガバナンスはガバガバで不正にも甘い。またヒーロー同士が功績を競う『セクターランキング』によって街に分配されるエネルギーが変動するという苛烈な設定がある。いびつな世界だ。
 そしてほとんどのキャラが明るさの影に暗い過去を背負い、生々しい欲望や信念とヒーローとしての宿命の板挟みになっている。ヒーローなのに、倫理観が薄かったり横暴で協調性がなかったり押しに弱かったりと尖っているのだ。つまり、エリオスRは単純な英雄物語ではなく、いびつな世界の中で、いびつな人間たちが生々しい感情をぶつけ合う物語なのだ。本物のヒーローとは何か? 正義とは何か? シナリオを読む際にはプレイヤー自身の価値観さえも問われてくるだろう。


 わたしのお気に入りシナリオは、気弱さと粗暴さを併せ持つ二重人格キャラ・グレイがピックアップされる3章。
 主役のグレイ・リヴァースは、25歳にしてエリオスのトライアウトに合格した遅咲きの研修生。ポテンシャルこそ高いが、自信の無い態度から十分な活躍ができない。というのも、元々内気な性格が災いして、入所前のアカデミーで同級生からいじめを受けており、暴力を恐れるようになってしまった。しかもエリオスでの配属先には、そのいじめっ子がメンターとして配置されており、訓練や共同生活の中で悪夢がよみがえる。次第に不安定になるグレイは、なぜか頭痛とともに凶暴な一面を見せるようになり…

 このグレイというのがとんでもない子で、現実のイキリオタク像がよく反映されており、設定がいちいちぶっ飛んでいて面白い。

  • リアルでのフラストレーションを発散するために、ネトゲではキル厨煽り暴言行為をしている有名な荒らし。
  • 偶然マッチングしたゲーム初心者の上官をキル後、煽る。
  • いじめ受けてた学生時代は常にナイフを隠し持っていた(中学生か?)
  • トライアウトにドーピングで合格。不正を咎められるも、観察対象扱いとしてエリオスに残ることになる 
  • 敵に襲撃され応戦している最中に凶暴な裏人格が出てきて、敵そっちのけで仲間を殺そうとする
  • ↑の設定なのになぜか周囲には真面目扱いされている。

 このように最初はうじうじしていたグレイだったが、メンターであるジェイ・研修生仲間のビリーとの交流によって、かつてのいじめっ子や自分の弱さと向き合い、人間的に成長していくのが見所だ。いびつな世界の中で、メンターリーダーによって自分の行為を糾弾された時もきちんと罪悪感を持ち、妥当な落とし所を見出して仲間とともに新しい一歩を踏み出していく。
 中の人・岡本信彦さんの早口でおどおどしたオタク演技、覚醒シーンのガラの悪い演技はまさに怪演である。こういうタイプのキャラクターが好きな人は必見だ。

 

 ここからは人気キャラ&わたしの推しを紹介。

 まずはわたしの最推し、ジェイ・キッドマン。CV森川智之氏。登場キャラ最年長、37歳のベテランヒーロー。優しく面倒見が良く、癖の強いエリオスキャラの中でも正義感が強い『理想のヒーロー』たるキャラクターとして描かれている。ヒーロースーツはMCUの社長に似ており、更に右腕は義手という、まさにアメコミ好きをそそるデザインだ。能力は自らの肉体強化。バリバリ肉体派ヒーローなので、立ち絵でも腕の太さの違いがよく分かる!
 ただ情にもろく優柔不断・突出して優秀すぎる故にチームでの協力が苦手という欠点もある。仕事に熱中するあまり離婚してしまったようで、離れて暮らす息子を気にかける父親としての一面もみせてくれる。かっこいいだけじゃない、等身大のヒーローなのだ。

「俺はそうやって格上だの格下だの序列化したり、肩書きだけで人を判断するのは好きじゃないし正直どうでも良いと思ってる」

 力を持ちながら驕らない。このセリフが最強ヒーローから出される重みよ。

 こちらは鳳(おおとり)アキラ。CV豊永利行氏。エリオスのアイコンを飾る熱血主人公ポジションで、メインシナリオ1章の主役だ。若さゆえに自らの実力を過信している青臭い一面があり、厳格なメンターリーダーと衝突しながらも成長していく。上官から任務を言い渡され、「特別任務?やっぱり俺は特別だったんだな!」ってはしゃいだり、他人のためにはっきり怒れたりする熱くて元気なキャラクターである。

 そしてこちらはエリオス随一の人気キャラ・フェイス。声優は今勢いを増しているランズベリー・アーサー氏。甘いマスクとダウナーな性格で多くの女の子を虜にしてきたモテ男。やる気のない態度を装いつつも、本心では優秀なヒーローである兄への憧れを捨てきれないかわいい一面がある。

 こちらも人気キャラ・ディノ。CV鈴村健一氏。『ラブアンドピース!』が口癖で、誰にでも屈託なく接する明るい青年。そんな彼が持つ暗い秘密はメインシナリオで明かされるので、気になった方はぜひ5章までプレイしてほしい。彼を好きになった方はきっとエリオスを楽しめるだろう。


 8月に1周年を迎え、メインシナリオ2部追加も決定したエリオス。サービス開始一年前からひっそりと推してきたが、今後とも、この爽やかさと歪さが同居する世界を見守っていきたい。あわよくばこれを読んでいる人にも一緒に見守って一緒に悲鳴を上げてほしい。

 

 

今週のお題「叫びたい!」