【感想】子供たちは狼のように吠える

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 暴力と性と男色に洋画のスパイスを足したジュブナイルです。

 もともと表紙に惹かれていたところ、Twitterのフォロワーさんにおすすめしてもらいました! 世界観が好みでした。

子どもたちは狼のように吠える1 (ハヤカワ文庫JA)

子どもたちは狼のように吠える1 (ハヤカワ文庫JA)

 
 

 登場人物の感情の起伏が少なく、淡々とトピックを消化していく救いのないノワール作品でした。肌を刺すほど寒いサハリンの風景描写もあいまって、作品全体に鋭利な雰囲気が流れています。

 SFでおなじみハヤカワ文庫から出ていますが、この作品のSF設定は日本とロシアの狭間・サハリンを舞台にするための装置なので、SF設定が苦手でも身構えなくても大丈夫です。逆に、近未来SF要素を期待してみると物足りないかもしれません。

 作者さんの文体の癖なのか、人物設定を文章でガーッと書き連ねるのでそこだけは読みにくかったです。

 

【以下ネタバレ感想】

 内容は所謂ニアBL作品です。主人公(表紙右の黒髪)が男にキスされたり掘られたりします。しかし、ニカとの性的・精神的交流は濃くは描かれていません。「正反対の環境で育ったボーイミーツボーイ」という設定は王道ですが、重いバックグラウンドを背負ったキャラがいる中、ニカとセナにはあくまでドライな関係性を持たせることによって、二人の兄弟としての絆に特別な緊張感が生まれています。

 しかしこの作品の売りはなんと言っても暴力描写なのでは。地の文にちょいちょい挟まれる拷問トリビアが興味深いです。


 裕福な家庭に育ち、サハリンの外を知らなかった主人公セナの瞳に、『学校』や娼館は残酷に映ります。彼は肉体的・精神的・性的とあらゆる暴力を受け、あるときは暴力を行使する側に回って逞しく成長していく。『学校』で凄絶な折檻を受けたセナが、ニカと共に逃げる決意を「強さ」と言い切ったシーンでは、彼の内面の成長が垣間見えました。
 この巻の時点では、まだセナとニカの殺人に対する意識には断絶があるように思います。マフィアの子として育ち、自分の死以外を恐れないニカは、オリガにさえ手をかける。しかしセナは自らを犯したケンゴを気絶させた時でさえ「人を3人殺し、ケンゴを裏切った自分はクズだ」と自責しています。たぶん、セナの根底はまだ犬、ライカ。ニカのような狼にはなりきれていない。
 今後セナとニカの関係がどう変化していくのか、セナは妹との別れや学校で得た強さを保ち続けることができるのか、次巻が気になるところですね。