#6「Ain't No Stoppin' Us Now」
2章完結。
元受刑者寮の食堂は冷え込んでいた。早朝ということでまだ日も上っておらず、採光窓にはうっすら霜が降りている。ガラスの向こう側では、雲がどんよりと重くたなびいているのが見えた。
グレイとギルバートの二人は木造りのベンチとテーブルに座り込んで、モニターを眺めている。朝のニュースでは、荒れ果てた公園を背景に神妙な顔のキャスターが映っていた。
『次のニュースです。先月テロが発生したセントラルパークでは、少しずつ復興作業が進んでいる模様です。そして実は、このセントラルパーク解放戦の立役者は、NA刑務所の元受刑者たち。一体どういうことなのでしょうか』
グレイはモニターを見つめながら作り置きのマッシュポテトを啄む。視線を滑らせると、隣のギルバートは食い入るように画面を見つめていた。
十二月一日。セントラルパーク解放戦から二週間が経とうとしていた。ベルによってティレシアの爆弾の被害は最小に抑えられたが、大怪我を負ったメンバーは入院中で、三人のバディにとっては落ち着かない日々が続いていた。
グレイはおもむろに切り出す。
「今からカイルサンと、レニィとスタンリーサンの退院を迎えに行くけど、お前も来るか」
「……おれは、いいや。別で行きたいとこあるし」
以前なら快活だったギルだが、彼はじっとりと元気のない返事を返しただけだった。
「辛気臭い顔するな」
その声には若干の苛立ちが滲んでいた。らしくもなく、しおらしくしやがって……。グレイは心中で呟く。ギルバートの態度の変化が気に入らないのだ。
――刑務所時代のふたりは、性悪で賢しらな、最強のコンビだった。外で何十人殺したギャングも、天性の詐欺師も、ぼくたちの前ではただの賭けのカモ。言わなくてもお互いのことはわかると思っていた……それが、今やこうだ。
彼のバディであるベルは、警察官ながらやる気もなく御しやすいタイプだと思っていたのだが、それがどうして、ギルバートはこんなに絆されてしまったのか。善をやたらに誉めそやし、悪からは遠ざかる。そんな「当たり前」で「清廉」な価値観は、かれが最も忌み嫌う常識の一つだったのに。
「ぼく、もう出るからな」
グレイは朝食の皿も片付けずに席を立ち、返事も聞かないうちに飛び出した。ジャケットを着込んだ細身の肩が怒りに震えていた。
寮の扉を開くと、木枯らしがびゅうと彼の身を打った。乾いた風に晒されたグレイは身をすくめ、こわごわと息をつき、その身体を仰け反らせる。こうして胸を張らないと、NAPD敷地内の張りつめた空気に飲まれてしまいそうな気がする。わずかな朝日に照らされて煌めく、なめらかで美しい白亜の本部棟が、彼にとっては怪物のようにも見えていた。
外では既にカイルが待ち構えていた。フェンスにもたれかかってメッセージをチェックしていた彼は、こちらに気づくと右手をあげて挨拶してきた。
「よう。昨日は眠れたか」
返事がわりに鼻を鳴らす。
「なんでぼくまであいつらの退院を迎えに行かないといけないんだ」
「スタンリーのバディだからだろ」
「ぼくはまだあいつがバディだって認めてない。やっと候補に入ってきたかそのくらいだ。警察は偽善者ばっかりだ。あいつのこともめんどくさい奴だとしか思ってない」
「それにしては、スタンリーが負傷してた時焦って怒ってたじゃねぇか」
「それはそれ、これはこれだ! スタンリーサンは怪我してたんだぞ! あんなケガみたらあんただって驚くくせに!」
グレイは噛み付いた。
二人はセントラルターミナルへ向かい、地下鉄の切符を切って、病院のあるアップタウンへ向かう。切符を懐にしまおうとするカイルを見て、ふとグレイが呟いた。
「――カイルサン、それは?」
カイルのジャケットの裏地のポケットに、何か見覚えのある紙が入っている。相手は、ああ、とぼやいて、その紙を懐から取り出した。
「……写真。もらった。『これは、貴方様が持っておくべきものだと思いますから』ってさ……」
カイルは紙をつまんでひらひらと振る。どうやらいつかの任務の際、元受刑者が撮っていたものらしかった。四角に切り取られた風景の中では、カイルとレニーがやわらかい光につつまれて座っている。グレイは余計眉を詰めて何か言いたげにしている様子だった。
NAの地下鉄はお世辞にも治安がいいとはいえず、地元住民ですらろくに利用しない。がたいのいい警官とワルを気取る青年二人だからいいものの、駅の中には不気味な静けさが漂っていた。車内の電子広告では、真面目な政策広報とヌードの男女の絡みがかわるがわるに流れている。そんな中で、カイルとグレイは微妙な距離を保ちながら、薄汚れたシートに座っていた。
先に沈黙をやぶったのはグレイの方だった。
「……お前、レニィのバディのことどう思ってる」
「今更そんなこと聞くのかよ。信頼してるぜ」
「……そうか」
脈略のない問いに、カイルは目をぱちくりさせていた。グレイが相槌を打ってちょうど、地下鉄が目的地にたどり着いた。
地下鉄のホームから地上に出ると、まぶしいほどの快晴が二人を迎える。青空はただ美しいだけではない。際限ない広さ、際限ない青の深さは時に人の心を溶かしてさまよわせる。そんな天が、歩幅の合わない二人を包んでいた。
――カイルの中の、『良い人』じゃない部分を引きずり出したい。そんな意地悪な心が、グレイの中で不意に首をもたげていた。実際のところ、彼はカイルのまっすぐさが気に食わなかったのだ。地上のまぶしさに目を細めながら、グレイはおもむろに切り出す。
「おれが一つ教えてやるよ。レニィは冤罪だったんだ」
カイルは思わず立ち止まり、意味が解せぬまま言葉を反芻した。
「冤罪……?」
カイルには、NAPDのパーカーに身を包むグレイの身体が、いつもより一回り小さく見えた。下らないからかいかとも思ったが、かれの脳裏には様々な心当たりが過ぎっていた――人殺しの演技なんて得意にきまってるしね。NAPD内では過激な捜査が行われ、冤罪が増えてきている。
「いつそんな話をしたんだ」
あっけにとられるカイルをよそに、グレイは左頬に手をやった。ぴりぴりとガーゼが剥がれ、彼の皮膚があらわになった。祈るように重ねられた両手のタトゥー。それをさすりながらつぶやく。
「はじまりはこのタトゥーだった」
最初は刑務所の悪友のひとりでしかなかった。親への反発の証だ、もうあいつらなんて知るもんか! そうやって自慢げに見せたタトゥーを褒めてくれたのがレニーだった。彼はグレイの横顔を伺って、こう切り出したのだ。
『――グレイはさ、僕の共犯者になってくれる?』
『いいぜ? なるよ、キョーハンシャ。聞かせろよ』
グレイは身を乗り出して二つ返事で了承して、その後の話に目を丸くした。
レオナルド・E・アンブローズ。逮捕時の罪状は殺人罪。けれど、本当に殺したのはレニーじゃない。
レニーは両親に嫌われていた。「普通」に育てていたはずなのに、「普通」とはいえない異性装ばかり。彼の「好きな服を着たい」という気持ちは、世間体を気にする両親には許されず、会う度に文句ばかりだった。そんな彼と反対に、姉は優秀で従順な子供。両親は姉だけを贔屓し愛するようになった。
――だが、そんな生活は唐突に終わりを告げる。その日、レニーは自分の部屋で喧嘩を聞いていただけだった。悲鳴を聞いて階下に様子を見に行った彼は、嘘みたいな光景を目にした。
座り込んで震える姉、動けずにいる両親、そして血まみれで倒れている男。彼の姉は、自分の婚約者が前科者だということを偶然知ってしまったらしい。騙されていたことを許せなかった姉は、口論の末、衝動的に婚約者を刺殺したのだ。
やってきたレニーのほうを見ながら、父親が声を絞り出す。
「優秀な娘が殺人犯なんてあっていいはずがない……他の誰かの仕業にしてしまえばいい」
母親も上擦った声で賛成した。たったそれだけで、彼の運命は歪んでしまった。
理不尽だと思ってないわけじゃない。けれど、姉が逮捕されたら? 両親の期待は全て弟であるレニーに移り、今まで以上に厳しく口出しされ、束縛されていたことだろう。自分らしさを奪われて生きていくくらいなら、犯罪者の汚名を背負う方がずっとマシだった。
『僕はそういう、自分勝手な人間』
レニーが口ずさむ。一方のグレイはほくそ笑んだ。
『レニィ、頑張ったな。もしレニィが望むなら、このプログラムで釈放された後、お前の両親殺していいけど……どうする?』
相手はしかし頬をゆるめた。
『えへへ、ありがと。気持ちは嬉しいけど遠慮しとこうかな! 僕はもう自由だし、会わない相手を気にしてるヒマなんてないもんねっ』
「……偽善者」
グレイは低く押し殺した声で囁いた。
「誰も本当のレニィを知らなかった。知ろうともしなかった! 正義だの更生だの偉そうに謳っておいて、目の前で冤罪で投獄されてる人間ひとり救えない。お前が思ってるほどキレイな組織じゃないよ、ここは。NAPDは偽善者のバカばっかだ!」
気に食わない。正義なんて誰のことも救いやしないのだ。レニィは、警官を庇ってあんなに酷い怪我をしなくてもよかった。ギルバートが警官のために沈んだ顔をする必要もないのに。
この真実を知らないまま、バディだなんだの、カイルに口にしてほしくなかった。グレイが告げた言葉で自分のことを責めればいい。無実のレニィを犯罪者と決めつけてかかり、果ては大怪我までさせた自分の、傲慢さと身勝手さを。
「……それが、アンタの本当の気持ちか」
カイルは顔を上げる。かれは意外にも落ち着いていた。新鮮な陽光が二人を照らし出していた。
「……レニーと約束したんだ。何があっても、最後までレニーのことを見てる、どんな運命になっても見届けるって」
そして、グレイに言葉を投げかける。その表情には力強い信念があった。
「……わざわざ罪を被ることを選んだなんて、レニーにも何か思うことがあったんだろ。なら、直接話を聞きたい。オレにできることは、プログラムが終わるまでバディとして向き合って、あいつの言葉を信じる事だと思ってる。オレ、レニーに会うまではわかってなかったんだ。自己犠牲がどういうものなのか……オレは強い人になりたい。もう自分やレニーや、ほかの誰かを犠牲にしなくても進んでいけるくらい、強い人に」
「…………」
グレイは沈黙したままふいに目線を逸らした。
「スタンリーも、ベルもそうだ。警察の中にはろくでもないやつもいるかもしれねぇ、でもあいつは無意味にアンタらを裏切ったりしねぇよ。グレイも気づいてるだろ」
「うるさい」
レキシントン・アベニューをしばらく歩くと、ガラス張りの華奢なビルが目に入った。受付で名前を伝えると、看護師の案内で病棟に通された。
スライドドアを開く。消毒液の鋭いにおいが鼻をつく。壁紙から椅子までそろって清潔な白で統一された部屋の中で、ベッドに腰かける青年がいた――レニーだ。俯いたまま動かない。
「……大丈夫か」
声を掛けると、青年はゆっくりと顔を上げた。カイルを見留めた彼の表情は、鮮やかでいたずらな微笑みに塗り変わっていった。
■
同時刻、レキシントン・アベニューの病院内。
ベッドのそばに赤毛の女が立っている。色白の肌、女性的でたおやかな骨格と肉付きながらも、その容姿には凛々しさがあった。
「もう、大丈夫です」
向かい合うベル=ソニアの声を聞いて、女性――ルイーズは頷いた。
「……おれは、死んだ姉さんとあなたを重ねていた。本当にごめんなさい。おれの姉さんはもう死んでいて、ルイーズさんはルイーズさんなのに……」
語尾が掠れていく。ベルは毛布の上の手を所在なさげに組み替えた。ニューアトランティスの医療によって、彼の体はどうにか不自由なく体が動かせる程度には回復していた。
姉を失って数年、溺れているようだった。足掻いて、もがいて、息継ぎのように上を向いてはわずかな希望を探したけれど、すぐに頭を押さえつけられて、悲しみの汚泥に引き戻されるようだった。でもそもそも、何もかも忘れる必要はなかったのだ。自分はひとりでも生きていける、姉の思い出を大切に抱えながら生きられる。そんな簡単なことに気づくのにかなり時間がかかってしまった。ルイーズのことさえも巻き込んで。
「でももう大丈夫、おれは前を向きます」
その言葉を受けて、ルイーズは穏やかな笑みで応える。
「うん。ベルがもう大丈夫なんだったら、私も安心だから。君たちのことを応援しているよ」
その口ぶりは、ベルが姉を失っていることにも、姉を投影した依存が向けられていることにも、とうに気づいていたことを示していた。
「ああそう。今夜、退院と任務終了をねぎらって、元受刑者寮で打ち上げが行われるらしいよ。お腹を空かせておくといい」
そして彼女は振り返り、ドアの曇りガラスからのぞく新たな訪問者を見とどめて笑った。
「入っていいよ。私はコーヒーでも買って先に帰ろうかな」
入れ替わりに病室へ入ってきたのは、ギルバートだった。病院まではルイーズに付き添われてきたが、帰路はベルが付き添う手はずになっている。バディと二人で話す時間を設けてやりたいという、彼女の粋なはからいによるものだった。
「……迎えに来てくれたのか?」
「うん……。無事でよかった」
沈黙するベルの前で、ギルバートは続ける。
「……ごめん、ベル。セントラルパークでベルが死ぬって考えただけで、おれ、悲しくて胸が張り裂けそうだった……。身近な人が死んだらつらくてたまらないって当たり前に感じるのに、おれは、ディーくんやサイちゃんに頼んで勝手に死のうとしてた。おれは、誰かを喪う苦しみを、ベルに味合わせようとしてた……誰かを人殺しにしようとしてたんだ……」
ベルは一瞬目を見開いて、暗い瞳の中にあたたかな色を宿した。だがすぐに唇を噛みしめて、震えた声で切り出す。
「うん。……自殺すれば、おまえは楽になったかもしれないな。でもそんなこと、おまえの気持ちが楽になるだけで誰も得しない。もし本当にギルが自殺してたら、おれはまともに生きてく自信がないよ。苦しみながらでも生きてくれ。死にたいくらい辛いかもしれない、でもその良心の呵責と折り合いをつけながら、これまでの負債を返して生きていくことが贖罪なんだから。これから感じる痛みや苦しさは、更生プログラムを通じておまえ自身が向き合わなきゃいけない課題なんだから」
「……ごめん、ベル……ごめん、ごめん……」
「自死なんか許さない。殉職なんか許さない。死ねば罪が許されるなんて思うなよ。おれの前で、二度と『死にたい』なんて言うな……!」
ギルバートは膝からくずおれて、嗚咽を漏らしながらベルの体に縋りついた。大粒の涙が絶え間なく頬を伝う。
ベルは彼の頭を撫でながらささやく。
「ギル。生きて、償え。おれが一緒にいるからさ」
更生プログラムに来なければ、ギルバートは自殺志願者にならなくて済んだかもしれない。でもここに来たから、自分たちふたりは立場こそ大きく異なってしまったけれど、どこかでつながっていたんだと信じることができる。それは独房の中で命を終えるよりかは、ずっと温かく、救いがあることのように思えた。
ベルとギルバートは病院を出て本部への帰路につく。
秋の終わりのニューアトランティスでは、来たるクリスマスのために飾り付けが始められていた。日の落ちる街の中で、ネオンサインが絶え間なくきらめいている。
二人がNAPD本部に着いてゲートをくぐろうとしたその時、ふいに後ろから控えめな声がかかった。
「あのう……おにーさんたち、NAPDの、更生プログラム……の人ですよね」
振り向くと、いつものレモネードの屋台が目に入った。テーブルの向こう、店番をしている女児が二人を見つめている。彼女は顔にかかった金髪をかきあげながら、おずおずと顔をあげた。
「じ、じつはっ。この前、お使い中にこわい人に追いかけられてた時、警官さんに助けてもらったんです! キレーな赤毛の女の人と、背が高い男の人……」
女児はペリドットの瞳をきらきらさせて、ベルとギルバートの姿を交互に見とどめた。
「ありがとうございましたっ。みなさんは、ボクのヒーローです! あの赤毛のおねーさんとおにーさん、ほかの皆さんたちにも、よろしく言っておいてください!」
サービスのホットレモネードを手渡しながら、天真爛漫な笑顔で女児が告げた。コップを片手に顔を見合わせ、ベルとギルバートはどちらからともなく微笑むのだった。
■エンドロール
その夜、寮の食堂を会場にしてこじんまりとした打ち上げが行われた。セントラルパーク解放戦でのはたらきが認められ、更生プログラムはNAPD内外でも一目を置かれるようになってきたそうだ。
「装備も十分ではない中で、あれだけの規模の戦闘をこなし、任務を完遂できて何より。さすが俺が見込んだメンバーだ、これからもがんばってくれよ」
上官は添えた。今後は解放戦の後始末として、セントラルパークの片付けと捕縛したティレシアへの取り調べを担当させられるらしい。人員の消耗が大きいため、負傷の激しかったスタンリー、レニー、ベルには療養を経てから任務に復帰してもらうそうだ。
テーブルの上にはデリバリーピザとフライドチキン、サラダ、カットケーキが並んでいる。半ば治外法権の元受刑者寮といえど飲酒はご法度ということで、メンバーはそれぞれジュース片手に談笑していた。それはどこか、九月のウェルカムパーティーを思わせる賑やかさだった。
「カイルやっと来た来た。待ちくたびれたよっ」
「おう。ほらスタンリー、ピザ取ってきたぞ」
「ありがと~! ……ってこんなに食べられないよ!」
「……あ、このケーキ甘くておいしいっスね……」
「ふふ、気に入ってくれて良かった」
「ちょっと! ワタシの皿に盛ったお肉を食べないでください!」
「だめなのか」
「ダメに決まってるでしょう!?」
バディにフライドチキンを食い尽くされ呆然とする警官。それを見兼ねたのか、隣に座る黒髪の青年が「よければ俺のをあげます……!」と自分のチキンを差し出している。誰もが穏やかで、誰もが安らかだった。
だがそうして盛り上がる食堂の隅で、不自然に輪に加わることなくその瞳で他を睨め回している男がいた。
「……ご都合主義だろうが食傷気味だろうが、大団円にハッピーエンド、実に素晴らしい! 感動で涙が出てきそうだね。アッハッハ!」
感傷とは程遠い、歌うような口調で男が呟く。彼はそっとケーキをつまみ、形のいい唇へ放り込んだ。手指に着いたホイップクリームをナプキンで拭って、こんどは紙皿の上のピザを千切りにかかる。チーズがべっとりと糸を引いて醜く垂れた。
「でもオレは、そんな幸せが滅茶苦茶にぶっ壊れる瞬間こそが、いちばん愛おしいのさ」
彼――レナードは独り言を漏らし、不敵な笑みを湛えていた。
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— Lemonade (@Lemonade_TL) 2021年8月14日
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